万葉集 巻二 87

ありつつも 君をば待たむ うちなびく わが黒髪に 霜の置くまでに
ありつつも きみをばまたん うちなびく わがくろかみに しものおくまでに

<私が考えた歌の意味>
今のままで、あなたを待ち続けましょう。
この黒髪に霜が降りるまで待っていましょう。

<私の想像を加えた歌の意味>
あなたの来ない夜が続いています。
あなたは今夜も来ないけれど、私は待っています。
たとえ、私のこの長くなびいている黒髪が白くなるまででも。
このまま待ち続けています。

<歌の感想>
 相聞の歌には、大袈裟とも受け取れる表現がある。
 この短歌では、一夜のこととして訳する場合が多い。そう受け取ると、「霜」は実際の霜を指す。私は、「霜」を白髪ととらえて、歌意を考えてみた。そうなると、いかにも大袈裟な詠みぶりになる。
 これほど思っている、と強めて表現する場合もある。一方では、本当にこのように思っている、と深い情感を表現する場合もある。
 相聞の歌では、正直な感覚の表現と、より強めた表現があり、その狭間を行き来しているように感じる。