万葉集 巻一 8 額田王

熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎいでな
にきたつに ふなのりせんと つきまてば しおもかないぬ いまはこぎいでな

<私の想像を加えた歌の意味>
船旅の準備をしつつ、月の出を待っていました。
出航の支度も整い、潮の具合もちょうどよくなりました。
さあ、今こそ、船出をいたしましょう。

 歌の背景の解釈はいろいろとある。しかし、どのような設定であっても、これから始まることへの作者の期待が詠まれていることを、はっきりと感じる。
 巻一の7と8は、額田王の作と伝えられるが、共通した所がある。それは、現代人が朗読しても味わえる声調の滑らかさと、表現には出てこないが、人々の動きが想像できる点だ。
 7の作では、行宮を造っている人々の動き、この作では、出航の準備をしている人々の様子だ。このように、働く民を思い描くことのできる短歌は、数少ないと思う。