万葉集 巻一 76

ますらをの 鞆の音すなり もののふの 大臣 盾立つらしも
ますらおの とものおとすなり もののうの おおまえつきみ たてたつらしも

<私が考えた歌の意味>
弓を持つ勇ましい人々の鞆の音が聞こえてきた。
軍を指揮する人が盾を立てているのであろう。

<私の想像を加えた歌の意味>
弓を射る時の装具が触れ合って鳴る音が聞こえてくる。
弓自慢の男たちが支度をして集まっている時の音だ。
勇ましい男たちの前では、彼らを指揮する大将が合図の盾を立てている様子が目に浮かぶ。

<歌の感想>
 武人の儀式が行われているのを、その場には行かない作者が想像していると受け取った。普段は聞かれない鞆の音から、盾を立てるという行動を類推しているのであろう。勇ましい武人たちと武具が持つ美しさが描かれているように感じる。
 ただし、作者元明天皇が「ますらを」にどんな感じを持っているのかについては、この短歌からは分からない。
 
 口訳萬葉集 折口信夫では、次のように解釈しているので、引用する。
達者な人々が、弓を引く手の鞆の音が、(復もや)して来る。また戦いの大将軍が盾を設けて、武術の練習をしているようだ。(此の御歌の中には、女帝であるだけに、人民の労苦を思はれる以上に、戦いを厭はれる御心持ちが拝せられる。)