万葉集 巻一 70

大和には 鳴きてか来らむ 呼子鳥 鳥象の中山 呼ぶびそ越ゆなる
やまとには なきてかくらん よぶこどり きさのなかやま よびそこゆなる

<私が考えた歌の意味>
大和の私の妻と子は、呼子鳥が鳴きながら飛んで来たと思うだろう。
今は私のいるきさの中山を越えていく呼子鳥の声が聞こえている。

<私の想像を加えた歌の意味>
今、旅先で鳴き声の聞こえている呼子鳥は、妻と子のいる大和へ飛んでいくのだろう。
渡ってきた呼子鳥の声を聞くと、妻や子は私が懐かしがって呼んでいると思うだろう。
きさの中山には、空高く渡っていく呼子鳥の声が響いている。

<歌の感想>
 鳥の泣き声を描き、その鳥の飛ぶ先を想像することで、家や家族を思う気持ちを表現している。
 今、眼前にある風物だけでなく、遠く離れた場所の時間的に先のことが描かれている。巻一の作者は、いくつかの短歌で、距離的に離れた場所を表現することに、強い意欲を示していると感じる。
 呼子鳥が大和から飛んで来た、と解する注釈書もある。