石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

つかれたる牛のよだれは
たらたらと
千万年も尽きるざるごとし

<私の想像を加えた歌の意味>
早朝から晩遅くまで、働かされ続けた牛がよだれを垂らしている。
たらたらと、鳴き声も上げない口から。
かなしげな目をして、うつむき、たらたらと、よだれを落とす。
いつまでもいつまでも、千万年も続くように、使役され続け、よだれを垂らし続ける。

<歌の感想>
 牛のよだれに注目しているのが先ず興味深い。そして、その様を「たらたらと」と詠んだことによって、飼われている牛が持つ悲しさを表現していると感じる。