与謝野晶子 『みだれ髪』 臙脂紫 より

清水(きよみず)へ祇園(ぎをん)をよぎる桜月夜(さくらづきよ)こよひ逢ふ人みなうつくしき

<私が考えた歌の意味>
清水へ向かって、祇園を通る宵の道を歩く。
道すがら、桜が咲いている。
夜の道だが、月に照らされて桜の花があでやかだ。
桜見物か、人通りも多い。
今宵は、通りすぎる人がみんなうつくしい。

<歌の感想>
 不思議な作品だ。ちっとも晶子らしくない。晶子でなければ詠めない感覚的な語もないし、晶子自身を歌っている語もない。それでいながら、美しい情景と、まるでその情景の中を歩いている気分に読者を誘う力をもっている短歌だ。
 「こよひ逢ふ人みなうつくしき」という経験は、時代を越えて多くの人々が共感できる感覚だが、それをこのように表現できるということは、稀なことであると感じる。