万葉集をどう訓み下すかは、専門的になり、私にはわからない。
 そこで、手元にある本で、巻一 15の訓み下し文と、口語訳の違いをみておく。

新日本古典文学大系 萬葉集 岩波書店
わたつみの豊旗雲に入日さし今夜の月夜さやけかりこそ
大海原にたなびく見事な旗雲に夕日が強く差して、今夜の月は明るくさやかであってほしい。

日本古典文学全集 萬葉集 小学館
わたつみの 豊旗雲に 入日見し 今夜の月夜 さやけかりこそ
大海原の 豊旗雲に 入日を見たその 今夜の月は 清く明るくあってほしい

日本古典文学大系 萬葉集 岩波書店
わたつみの豊旗雲に入日見し今夜の月夜さやに照りこそ
大海の豊旗雲に入日の差すのを見た今夜は、月もさやかに照って欲しいものである。

口訳萬葉集 折口信夫
わたつみの豊旗雲に入日さし、今宵の月明らけくこそ
海の上に、大きな雲が広がつてゐる。その雲に落日がさす位の天気になつて、今夜の月は、明らかであつてくれ。


 古典は、原文そのものが何通りもある。さらに、それをどう訓(よ)み下すかで、歌の意味がまるっきり違う場合もある。
 そこが、またおもしろい。

 巻一の13、14は、男性二人と女性一人の三角関係を山にたとえているが、どう解釈するかで、山それぞれの性別さえもまるっきり違ってしまう。