万葉集 巻一 13

香具山は 畝傍を惜しと 耳梨と 相争ひき
かぐやまは うねびをおしと みみなしと あいあらそいき

神代より かくにあるらし 古も 然にあれこそ
かみよより かくにあるらし いにしえも しかにあれこそ

うつせみも 妻を 争ふらしき
うつせみも つまを あらそうらしき

<私の想像を加えた歌の意味>
香具山は前々からうねびを妻にしようとしていた。
そこへ自分こそが、うねびを妻にするのだと、みみなしが出しゃばってきた。
香具山は、うねびをやすやすと奪われたくないので、みみなしと争った。
神の時代からこういう争いがあったと言い伝えられている。
昔から、こういう話があるのだから、今の世でも一人の女性のことで二人の男性の争いがあっても不思議ではない。

<歌の感想>
 三山の性別についても、様々な説があり、どれをとるべきかの判断がつかない。根拠はないが、香具山を男性で作者、畝傍を女性、耳梨を横恋慕する男性ととらえて、歌の意味を考えた。
 妻と決めていた女性を奪われそうになっている作者を想像した。だから、この長歌には、もう決まっている二人の仲を裂こうとする嫌な奴がいるのです、という作者の嘆きもありそうだ。
※本文は、新日本古典文学大系 岩波書店によった。