万葉集 巻一 2 舒明天皇御製歌

大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山
やまとには むらやまあれど とりよろう あめのかぐやま

登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 
のぼりたち くにみをすれば くにはらは けぶりたちたつ

海原は かまめ立ち立つ うまし国そ あきづ島 
うなはらは かまめたちたつ うましくにそ あきづしま

大和の国は
やまとのくには

<口語訳>日本古典文学全集 万葉集 小学館 より引用
大和には 群山があるが 特に頼もしい 天の香具山に 登り立って 国見をすると 広い平野には かまどの煙があちこちから立ち上っている 広い水面には かもめが盛んに飛び立っている ほんとうに良い国だね (あきづ島)  この大和の国は

<私の想像を加えた歌の意味>
香具山は、大和では一番の山である。
その香具山に登り、大和の国の様子を見おろした。
広い平野からは、かまどの煙があちこちで立ち、人々の暮らしは豊かである。
広い水面から、かもめが盛んに飛び立ち、水辺の草木動物は豊かである。
すべてが整っている国だ。
私が統治している大和の国は。

<歌の感想>
 「国見」は、天皇の政治的行事と解説されている。政治的な行事に伴った長歌であるから、内容は形式的なものだろう。
 ただし、この作品は型通りでつまらないという感じはない。国見という行事の際に、長歌を詠むことがされ始めて間もないのではないかと思う。国見の行事が毎年行われ、その度に長歌を作るとなると、それはだんだんにマンネリになり、形式的になる。しかし、そういう行事が成立した頃は、行事に伴う長歌そのものもまた新鮮だったと思う。
 大和という国の形ができあがりつつあり、まだまだこれから発展させようという時代の流れを感じる。