山家集 上巻 春 37 7018

この春は 賤が垣根に ふればひて 梅が香とめん 人親しまん
このはるは しずがかきねに ふればいて うめがかとめん ひとしたしまん

<口語訳>
この春は、梅の香りを求めて、我が家の粗末な垣根に近寄って来た人と親しくなろう。

<意訳>
ただ通りがかっただけの人が、我が家の粗末な垣根に近寄ってくれた。
梅の香りに誘われて、思わず我が家に立ち寄ってくれたのだ。
まるで我が家を訪ねて来てくれた人のように。
この春は、梅の香りだけが縁のこういう人と親しくしよう。


 「山家梅」35~37の三首で、ひとつの物語ができあがっている。
 せっかくの梅の花の香りなのに、それを一緒に楽しもうという訪問者もいない。訪ねて来た人はいなかったが、偶然に通りがかった人が我が家の梅を楽しんでいる。知らない人ではあるけれども、情趣を解するこういう人と親しく話をしてみたい。
 このようにつながっていくと感じた。