山家集 上巻 春 35 7016

香をとめん 人こそ待て 山里の 垣根の梅の 散らぬかぎりは
かをとめん ひとこそまて やまざとの かきねのうめの
 ちらぬかぎりは

<口語訳>
梅の花の香りを求めてやってくる人を待っていよう。山里の垣根の梅がすっかり散ってしまうまでは。

<意訳>
梅の花が見事に咲いて、よい香りを漂わせているのに、山里の私の庵を訪ねてくる人はいない。
この梅の花を、一緒に楽しむこともできない。
でも、誰か訪ねてくる人がいるかもしれない。
あきらめないで、待っていよう。
垣根の梅の花が散ってしまうまでは。

 せっかく梅の花が咲く季節になったのに、今日もまた誰も訪ねてきてくれなかった、という作者の気持ちを感じる。
 あるいは、山里の作者の所には訪問者がいるのかもしれない。訪ねて来てくれた人に短歌を披露するには、この作のような設定を伝える方がおもしろかったと想像もできる。