石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」 より

燈影(ほかげ)なき室(しつ)に我あり
父と母
壁のなかより杖つきて出づ

<口語訳>
明かりのない部屋に独りでいる。
闇の中、父と母があらわれた。
暗い壁の中から、二人とも杖をついた姿でうかんでくる

<意訳>
父母に長年会っていない。
独り、明かりのない部屋にいると、父母のことに思いがいく。
闇の中から父と母があらわれた。
二人ともに杖をついた姿だ。
二人ともに老いた姿で、私の前にあらわれた。